生きてる機械

プラネタリウムは偽装星

生きてる機械. 1

 

 

生きてる機械

 


信号とプログラム、計算式、配管、ビニル、電線や電光掲示板に溢れたこの世界で、何だって自分の運命などを知りに来るのだろう。

そんな疑問も、とうの昔に蒸気の一部となって消えてしまった。

今では灰色のこの街で、日がなゆるりとお客を招くだけである。

店舗を一つ借りられただけでも自分は相当恵まれた方だ。

外を見遣る。灰色の筺達の陰に何かが動き、地面を黒いものがよぎった。珍しい。まさか野良猫か。いつの時代の話だ。

壁をめぐる配管からところどころ覗くケーブル束を尻目に煙管を持ち直した。指先で操る其れは長い管に繋がれており、取り回しが面倒で、重い。使い慣れればそうでもないのだろうが。


いくつも、いくつも、見てきた。


最初は興味本位だったかもしれない。いや、今となっては始まりなどもはや憶えてはいない。

最初は小さな石だった。次に紙束を扱うようになった。何、商売道具の話だ。危ないもんじゃない。当たり前だ。

そして気づいたら、ここでお客を取るようになっていた。

懐中時計の蓋を開ける。パチンというあの音がなる。軽いような、重いような、掠れたような。人によってはどうでもいい音だ。

午後一時半。そういえば今日はまだ鐘が鳴っていない。この街にはご丁寧に教会なんて物もある。昼と夕方の2回、毎日鐘が鳴り、民間人が出入りしている。子供、大人、老人、そうでないもの。何に向かって祈っているのか識らないが。