生きてる機械

プラネタリウムは偽装星

きおく

 

後は、あの子のことを少しずつ忘れていく時間があるのかと思うと、つらいなぁ。毛並みや耳の触感も、匂いも、指の弾力も、歩く時の音やこちらにうったえかける感じも、ため息の音も、床をかいて人を呼ぶあの音も、人の指や金網に頭をこすりつける姿も。いまは全部憶えてる。

でも、忘れたくないって思っても、きっとこのさき頭は少しずつ小さな記憶を手放していく。

あの子がいたことは憶えていても、あの子の毛並みの触感まで憶えていられるだろうか。

忘れないように頭の中で何回も再生して巻き戻して、でも繰り返すうちにだんだん記憶が薄れていって、思い出せないことにくるしんで、俯くの、目に見えてる。

頭は残酷なことをしてきます。

そうじゃなきゃいいのに。そうじゃなくできるかなぁ。

いまは君だけがいとおしいです。